解決事例・コラム(GK総合法律事務所)

法人破産|元取締役への未払金・借入金が膨らんだ会社を、代表者個人の破産なしで清算した事例(負債5,000万円超)

2026年09月13日 20:50

会社をたたむと決めたとき、多くの経営者の方が最初に不安に思われるのは「自分自身も破産しなければならないのか」という点です。

金融機関からの借入れに代表者が連帯保証をしている場合、会社と代表者が同時に破産を申し立てるのが通常です。しかし、連帯保証をしていなければ、会社だけを清算し、代表者個人は破産しないで済むことがあります。

本件は、創業者の死去をきっかけに事業の継続が困難になった小規模なメーカーについて、会社のみの破産を申し立て、代表者個人は破産することなく手続を終えた事例です。負債の9割以上は、元取締役とその関係者に対する未払金と借入金でした。

こんな方に参考になるかもしれません

✓ 会社をたたみたいが、自分自身も破産することになるのか分からない

✓ 銀行からの借入れは少ないのに、元役員やその家族への未払い・借入れが積み上がっている

✓ 創業者や技術者が抜けて、事業を続けられなくなった

この記事で分かること

  • 分野:法人破産(通常管財事件)

  • 依頼前の状態:赤字が続き事業を停止。会社の負債は5,000万円超で、その大半が元取締役とその関係者への未払金と借入金。代表者ご自身も破産することになるのか分からない状態

  • 解決後の状態:会社の債務を清算。代表者個人は破産の申立てをせずに済んだ

  • 期間:受任から申立てまで約1か月、手続終了まで約10か月

ご相談の背景

ご依頼者様は、創業者から経営を引き継いだ2代目の代表取締役です。

会社は独自に開発した製品を自社のインターネット通販で販売する小規模なメーカーで、設立から20年近く事業を続けてきました。従業員はアルバイト2名という規模です。

事業の柱は創業者が開発した製品でした。ところがその創業者が病に倒れ、開発が止まります。ご依頼者様は前職を辞めて経営に加わり、製造体制を立て直し、海外にも販路を広げようと動かれました。それでも売上は戻らず、赤字が3期続きます。

そして創業者が亡くなりました。

会社を持たなくさせたのは、外の借金ではありませんでした

このとき会社が抱えていた負債は5,000万円超。ところが銀行からの借入れは数百万円、外部の取引先への未払いはごくわずかでした。

9割以上を占めていたのは、元取締役とその関係者に対する未払金と、元取締役が会社に貸していたお金でした。

小さな会社では、資金繰りが苦しくなったとき、まず役員への支払いが後回しになります。報酬を止める、経費の立替えをそのままにする、役員が借りている場所を会社が使い続ける。足りない分を役員が個人のお金で立て替えたり、会社に貸したりすることもあります。

そのときは目の前の資金が回りますが、会社の帳簿には、未払金や役員からの借入金として、その分が積み上がっていきます。

本件もそうでした。創業者は、報酬などの未払いを抱えたまま、会社に無利息でお金を貸してもいました。金融機関からの借入れには利息が付いているのに、創業者からの借入れには付いていない。会社を支えるためのお金だったことが、決算書の数字から見て取れます。

問題は、その債務が本人の手を離れたときに起こります。

本件では、創業者が亡くなったことで、会社が創業者に負っていた未払金も貸付金も、そのまま相続人へ引き継がれました。会社にとっては、これまで待ってもらえていた相手が、一度も会ったことのない相手に変わったということです。

もう一つ、実務の中核を担っていた別の元取締役との関係も、同じ時期に終わりました。この方が持っていた事業のノウハウは会社側に残っておらず、売上の半分以上を占めていた部門が、契約の終了とともに会社を離れました。

残ったのは、開発の止まった主力事業と、5,000万円を超える身内向けの債務でした。

ご依頼者様ご自身も、会社に対して1,000万円を超える債権を持つ立場でした。

最後の望みとして海外での販路拡大を試みられましたが、それも実らず、事業を停止されました。従業員の方の整理も済ませたうえで、当事務所にご相談にいらしたのが、事業を止めた直後のことです。


会社の資金繰りや事業の継続にお悩みの方は、東京都杉並区・南阿佐ケ谷のGK総合法律事務所へお早めにご相談ください。

ご相談のご予約は、下のフォームから24時間お受けしています。

弁護士の対応と解決のポイント

① 「代表者個人は破産しない」という方針を、最初に確定させた

ご相談を受けてまず確認したのは、ご依頼者様が会社の債務を連帯保証していないかどうかでした。

中小企業の場合、金融機関からの借入れには代表者の連帯保証が付いているのが通常です。連帯保証があれば、会社が破産した時点で保証債務の請求が代表者個人に向かいますから、個人も同時に破産を申し立てる必要が出てきます。

本件では、借入れが1件・数百万円にとどまり、ご依頼者様は連帯保証に入っていませんでした。また、個人として抱える他の債務もありませんでした。つまり、会社が破産しても、ご依頼者様個人には破産の原因がない。

この見立てを裁判所への報告書にも明記し、会社のみの申立てとする方針を最初に固めました。

ご依頼者様にとっては、「自分の生活まで壊れるわけではない」と分かったことが、その後の手続を前に進める土台になりました。

② 身内向けの債務を、性質ごとに整理した

本件で最も説明を要したのは、元取締役とその関係者に対する債務の扱いです。同じ相手に対して、報酬などの未払金と、会社への貸付けが混在していました。

身内への未払いは、金額が大きくても書面が乏しいことが少なくありません。本件でも、それぞれの債務がいつ、どういう性質で発生したのかを、決算書と会社の記録から一つずつ確認する作業が必要でした。

これを債権者一覧表と報告書に整理し、裁判所に提出しました。ご依頼者様にとっては、「誰にいくら残っているのか」が初めて一枚の表になったことで、ご自身の置かれた状況を数字で把握できるようになりました。

受任から申立てまで約1か月で手続に乗せています。

③ 管財人の調査に、資料で正面から答えた

本件は通常管財事件となり、裁判所が選任した破産管財人による調査が行われました。

会社をたたむ前後の取引については、管財人が資料をもとに確認していきます。申立代理人としては、当時どういう経緯でその判断に至ったのかが分かる資料を整理し、管財人からの照会に都度お答えしました。ご依頼者様にも、追加の資料や説明を重ねてご協力いただいています。

調査を経て、手続は終了に向かいました。

解決の結果

  • 手続:破産手続開始決定(通常管財事件)を経て、異時廃止(配当できるだけの財産が確保できないため、手続の途中で終了すること)で終了

  • 期間:受任から約10か月

  • 代表者個人:破産の申立てをせず(連帯保証がなく、個人としての債務もなかったため)

会社の債務は、法人の消滅により清算されました。ご依頼者様個人は破産することなく、次の生活へ進まれています。

弁護士からのコメント

会社をたたむご相談で、経営者の方が最初に口にされるのは、ほとんどの場合「自分はどうなるのか」です。従業員のこと、取引先のこと、家族のこと。会社の数字の話に入る前に、そこが決まらないと落ち着いて考えられない、というのが実際のところだと思います。

長く続けてこられた会社であればなおさらで、決断そのものに時間がかかります。本件のご依頼者様も、創業者から引き継いだ事業を自分の代で終わらせることに、相当なお気持ちの整理が必要だったはずです。

そのうえで私は、ご相談の一番はじめに保証関係を確認します。連帯保証があるのかないのか。あるとすれば、どの債務にいくらか。ここが決まれば「会社だけの問題なのか、ご自身の生活まで含めた問題なのか」が見えます。見通しが立てば、その後の判断は驚くほど早くなります。

そしてもう一つ、元役員やその家族に対する債務が積み上がっている会社のご相談は、決してめずらしくありません。

会社が苦しいとき、役員への支払いを後回しにするのは自然なことです。外部への支払いを守るために、身内が引くのですから。無利息で会社に貸すのも、同じ気持ちからだと思います。ただ、その債務は消えていません。役員が亡くなれば相続人に引き継がれますし、役員を退けばその方や家族から返済を求められることもあります。待ってくれていたのは債権そのものではなく、その人との関係だったということです。

本件のご依頼者様も、会社に対して1,000万円を超える債権をお持ちでしたが、これは他の債権者と同じ一般の破産債権として扱われ、戻ってきません。「自分や他の役員への未払いが増えている」と感じたら、それは会社の状態を見直す合図だと思っていただきたいのです。

よくある質問

Q. 会社が破産すると、社長個人も必ず破産しなければならないのですか?

A. いいえ、必ずではありません。判断の分かれ目は連帯保証の有無です。金融機関からの借入れに代表者が連帯保証をしている場合は、会社の破産によって保証債務の請求が個人に向かうため、個人の破産も併せて検討することになります。一方、本件のように連帯保証がなく、個人としての債務もない場合は、会社のみの申立てで足ります。まずはご自身が何をどこまで保証しているかをご確認ください。


Q. 元役員やその家族への借入れ・未払金も、破産では債権として扱われるのですか?

A. はい、扱われます。役員報酬の未払いも、役員からの借入れも、原則として一般の破産債権です。書面がなくても、帳簿に載っていれば債権として扱われます。



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弁護士 小澤亜季子(東京弁護士会所属)