失踪宣告と不在者財産管理人はどちらを選ぶ?違いと使い分けを弁護士が解説
2026年08月07日 10:00
ご家族や相続人が行方不明のとき、法律上の対応として代表的なのが「失踪宣告」と「不在者財産管理人」の2つです。どちらも家庭裁判所の手続で、「どちらを使えばよいのか」というご質問を多くいただきます。結論から言えば、2つは目的も効果もまったく別の制度で、ご家族の状況と「何のために手続をするのか」で選び方が決まります。この記事では、違いと使い分けを弁護士が解説します。
以下に1つでも当てはまる方は、本記事が参考になるかもしれません。
✓ 相続人の中に行方不明の人がいて、遺産分割が進められない
✓ 家族が7年以上行方不明で、そろそろ法律上の区切りをつけたい
✓ 失踪宣告と不在者財産管理人のどちらを申し立てるべきか迷っている
2つの制度は「前提」が正反対
失踪宣告:生死が7年間分からない方を、法律上死亡したものとみなす手続です。死亡とみなされることで相続が開始し、戸籍にも反映されます
不在者財産管理人:行方不明の方が生きていることを前提に、その方の財産を管理する人を家庭裁判所に選んでもらう手続です。ご本人を死亡扱いにはしません
つまり、失踪宣告は「その方自身の法律関係に区切りをつける」制度、不在者財産管理人は「その方の帰りを待ちながら財産を守る」制度です。
5つの項目で比較する
効果:失踪宣告=死亡とみなされ相続が開始/不在者財産管理人=財産の管理のみ(生存扱いのまま)
期間の要件:失踪宣告=原則として生死不明が7年間続いていること/不在者財産管理人=期間の要件なし(行方不明になって間もなくても申立て可能)
手続にかかる時間:失踪宣告=裁判所の公告期間などが法律で定められており、申立ての準備から審判確定までおおむね1年程度かかることが多いといえます/不在者財産管理人=比較的短期間で選任されます
できること:失踪宣告=相続手続・戸籍の整理など死亡を前提とした手続全般/不在者財産管理人=財産の保存・管理が基本で、遺産分割協議への参加や財産の処分には裁判所の個別の許可(権限外行為許可)が必要です
終わり方:失踪宣告=審判確定で完結する一回きりの手続/不在者財産管理人=ご本人が現れるか死亡が確認されるまで管理が続く制度で、管理人の報酬などの負担が継続することがあります。不在者の財産だけで費用を賄えない場合、申立人が予納金の納付を求められることもあります
不在者財産管理人が向いているケース
行方不明になってからまだ7年経っていないが、遺産分割協議を進める必要がある
ご本人が生きている可能性を前提に考えたい
目的が「今回の遺産分割を成立させること」に限られている
このような場合は、不在者財産管理人を選任し、裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加してもらう方法が基本になります。ただし、管理人はご本人(不在者)の利益を守る立場なので、不在者の取り分をなくすような分割は原則として通らない点に注意が必要です。
失踪宣告が向いているケース
生死不明が7年以上続いている
相続や戸籍の整理まで含めて、法律関係全体に区切りをつけたい
行方不明のご本人の年金・預金口座が宙に浮いたままになっている
すでに7年以上が経過している事案では、不在者財産管理人を挟むと、管理の継続的な負担と失踪宣告の費用が二重にかかることになりかねません。最初から失踪宣告を選ぶ方が結果的に負担が小さいことが多いといえます。
どちらの手続を選ぶべきか迷ったら、東京都杉並区・南阿佐ケ谷のGK総合法律事務所へお早めにご相談ください。
実務の落とし穴——「死亡とみなされる日」で相続関係が変わる
失踪宣告で見落とされがちなのが、「死亡したものとみなされる日」(普通失踪では生死不明となってから7年の期間が満了した日)と、他のご家族が亡くなった日の前後関係です。
みなし死亡日が親御さんの死亡より前なら、行方不明の方は相続人にならず、その方にお子さんがいれば代わりに相続する(代襲相続)ことがあります
みなし死亡日が親御さんの死亡より後なら、いったん行方不明の方が相続し、続いてその方についての相続が発生する、二段階の相続関係になります
つまり、失踪宣告をすれば行方不明の方を単純に相続から外せる、というものではありません。誰がいつから行方不明なのかによって相続人の範囲そのものが変わるため、申立ての前に戸籍と時系列を整理して見通しを立てることが重要です。
よくある質問
Q. 7年以上行方不明なら、必ず失踪宣告を選ぶべきですか?
A. いいえ、必ずではありません。7年が経過していれば失踪宣告を申し立てられますが、ご本人の生存を信じて死亡扱いを避けたい場合には、不在者財産管理人で財産の管理だけを行う選択もあります。目的(相続・戸籍まで整理するのか、財産を守るだけか)とご家族のお気持ちの両方で決めるのが実務です。
Q. 不在者財産管理人は、いつまで続くのですか?
A. ご本人が現れるか、死亡が確認される(または失踪宣告がされる)まで続きます。終わりの時期が決まっていない制度のため、管理人の報酬などの負担が長期化することがあり、この点が「一回きりで完結する」失踪宣告との大きな違いです。
Q. それぞれの費用はどのくらいかかりますか?
A. 当事務所では、失踪宣告の申立てについて着手金15万円・報酬金15万円(いずれも税別)を目安としています(収入印紙・官報公告料などの実費は別途)。不在者財産管理人の選任申立ては事案により異なるほか、不在者の財産状況によっては申立人が予納金の納付を求められることがあります。いずれもご相談の際にお見積りをご提示します。※費用は個別の事案により異なり、この金額を保証するものではありません。
実際に失踪宣告を選び、審判の確定まで進めた事例は、失踪宣告|20年以上行方不明のご家族について高齢の父が申立て、約1年で審判が確定した事例をご覧ください。
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弁護士 小澤亜季子(東京弁護士会所属)