解決事例・コラム(GK総合法律事務所)

役員辞任|建設会社の取締役部長(50代)が辞任と退職を同時に進め、有給を消化して約1か月半で退任した事例

2026年10月14日 12:22

建設業の会社で取締役を兼ねる部長職にあったご依頼者様が、取締役の辞任と従業員としての退職を並行して進め、残っていた有給休暇を使ったうえで退任した事例です。

最大の懸念は「登記に名前が載っている自分が、会社の了承なしに辞められるのか」「辞め方によっては損害賠償を言われないか」の2点でした。

弁護士が受任通知を送ってから1週間で会社の了承を得て、ご相談から約1か月半で辞任登記の確認と退職まで完了しました。

役員を兼ねているために退職の切り出し方が分からない方に、弁護士がどのように対応したかをご紹介します。

以下に1つでも当てはまる方は、本事例が参考になるかもしれません。

  • ✓ 役職は取締役だが、働き方の実態は従業員と変わらない

  • ✓ 辞めたい気持ちは固まっているのに、自分からは言い出せない

  • ✓ 「登記に名前がある」「引継ぎが不十分だと賠償を求められる」と聞いて不安になっている

この記事で分かること

  • 依頼者:建設業の会社で取締役を兼ねる部長職の50代男性

  • 相手方:勤務先の会社(担当役員が窓口)

  • 争点の対象:取締役の辞任と従業員としての退職の進め方

  • 最大の争点:辞任日・退職日の決め方と、損害賠償の懸念

  • 解決結果:辞任と退職の両方を会社が了承。有給休暇を取得し、辞任登記も完了。損害賠償の請求はなし

  • 解決期間:ご相談から退職日まで約1か月半(受任通知から会社の了承までは1週間)

  • 依頼前の状態:早朝からの長時間勤務が続き、職場の人間関係をめぐる事情もあって退職の意思は固まっていたものの、役員であるために「自分では言い出せない」まま有給休暇で休んでいる状態

  • 解決後の状態:会社との連絡を弁護士が引き受け、辞任日と退職日が確定。有給休暇を取得し、辞任の登記まで確認して退職日を迎えた状態

この記事を読むと、次の3点が分かります。

  • 取締役を兼ねる従業員が辞めるとき、辞任日と退職日を別々に決められること

  • 会社から辞任日の変更を求められたときの考え方

  • 弁護士に依頼すると、会社とのやり取りがどう変わるか

ご相談の背景

ご依頼者様は、建設業の会社に国家資格を持つ現場責任者として勤務し、数年前に取締役を兼ねる部長職に昇任しました。登記上は会社の取締役の一人ですが、ご本人の言葉では「実態としては従業員と変わらない」働き方で、早朝に起きて現場へ向かい、12時間ほどの勤務が続く日々でした。

相応の給与は受け取っていたものの、職場の人間関係をめぐる事情が重なり、会社に居づらさを感じるようになりました。退職の意思は固まっていましたが、役員という立場もあって、ご自身で会社に切り出すことができないまま、やむを得ない事情で有給休暇に入っていました。

ご相談の時点で気がかりだったのは、次の点です。

  • 登記に名前が載っている取締役が、会社の了承なしに辞められるのか

  • 自分が辞めることで、会社から損害賠償を求められないか

  • 有資格者が一人欠けることで、会社に迷惑がかからないか

  • 残っている有給休暇を使って、翌月から次に進みたい

この段階で当事務所にご相談・ご依頼いただきました。

役員を兼ねていて退職の切り出し方に迷っている方は、東京都杉並区・南阿佐ケ谷のGK総合法律事務所へお早めにご相談ください。

弁護士の対応と解決のポイント

① 辞任日と退職日を別々に設定できる前提で、会社へ受任通知を送付

ご相談の当日に電話で状況を伺い、その日のうちにご依頼を受けました。取締役の辞任は、ご本人の意思表示で効力が生じ、会社の承諾は必要ありません。一方、従業員としての退職には退職日の設定と有給休暇の扱いが関わります。この2つは別々の日付で決められるため、辞任の時期については会社の意向も聞きながら調整し、退職日と有給休暇の取得は確実に確保する、という組み立てにしました。

そのうえで、会社へ受任通知を送りました。取締役を辞任すること、従業員としては月末に退職して退職日までは有給休暇を取得すること、今後の連絡は弁護士宛にお願いすることを伝える内容です。

これにより、ご依頼者様は会社へ自分から切り出す負担から解放され、会社からの連絡に直接対応する必要もなくなりました。

② 会社の希望に合わせて辞任日を繰り上げ、退職日と有給休暇は当初どおり

受任通知の送付後、弁護士から会社に電話し、社長と直接お話ししました。受任通知から1週間で会社から回答があり、月末の退職と退職日までの有給休暇の取得は、当方の申し出どおり了承されました。

一方で会社からは、取締役の辞任日については月末ではなく、回答の翌日付にしてほしいという希望が出ました。ご依頼者様と相談のうえ、辞任日は会社の希望に合わせて繰り上げ、従業員としての退職日は当初どおり月末とする形で折り合いをつけました。会社の求めに応じた書面のやり取りも、弁護士を通じて行っています。

辞任日が先に確定したことで、ご依頼者様は残りの期間を有給休暇として過ごし、退職日を待つだけになりました。

③ 辞任登記を確認し、退職日まで見届ける

取締役の辞任登記は会社が申請する手続で、ご本人が自分で申請することはできません。そこで、弁護士側で登記情報を取得し、辞任が登記されていることを確認したうえでご依頼者様にお渡ししました。登記情報には、辞任の翌日付で後任の取締役が就任したことも記載されていました。

その後、ご依頼者様は有給休暇を取得したまま月末に退職しました。会社から損害賠償を求められることはなく、退職後の事務的な連絡も会社から届いています。「登記に名前が残ったままではないか」という不安は、登記情報を手にした時点で解消しました。

解決の結果

  • 解決方法:弁護士の受任通知と電話による交渉(裁判手続なし)

  • 解決内容:取締役の辞任と従業員としての退職の両方を会社が了承。辞任日は会社の希望で繰り上げ、退職日は当初の希望どおり月末に

  • 有給休暇:退職日まで取得

  • 辞任登記:完了を登記情報で確認

  • 損害賠償:会社からの請求なし

  • 解決期間:ご相談から退職日まで約1か月半。受任通知から会社の了承までは1週間

ご依頼者様は、会社と直接やり取りすることなく退職日を迎えました。

担当弁護士からのコメント

「辞める気持ちは決まっているのに、自分からは言い出せない」というご相談は、役員の方からよくいただきます。長年会社に貢献し、責任ある立場を任されてきた方ほど、辞めることに後ろめたさを感じたり、会社に迷惑をかけるのではないかと考えたりして、一歩が踏み出せなくなります。ご依頼者様も、ご自身の年齢に触れながら、自分からは辞めると言えなかったと率直に話してくださいました。

役員を兼ねている方の退職では、通常の退職にはない不安が重なります。登記に名前が残るのではないか、自分が抜けることで会社から責任を問われないか。こうした不安を抱えたまま、ご自身を責めるように話される方も少なくありません。不安の中身をひとつずつ確かめると、多くは整理できます。登記は会社が行う手続であること、取締役が複数いて法律や定款の最低人数を下回らない限り、一人が辞めても直ちに問題にならないこと、引継ぎの範囲はご本人の業務の性質によることです。

実務で意識したのは、辞任日と退職日を分けて考えることです。取締役の辞任と従業員としての退職は別の手続なので、日付を同じにする必要はありません。本件では会社から辞任日を早めたいという希望があり、それ自体はご依頼者様に不利益のないことでしたので、会社の希望に沿う形で辞任日を決め、退職日と有給休暇はそのまま確保しました。取締役の辞任の基本的な仕組みについては、こちらの事例もご参照ください。

役員としての立場があるために退職を切り出せずにいる方は、ぜひ一度ご相談ください。

よくある質問

Q. 取締役の辞任日と、従業員としての退職日は、別の日にできますか?

A. はい、できます。取締役の辞任は会社との委任関係を終える意思表示で、従業員としての退職は雇用契約を終える手続です。別の手続なので、辞任を先に、退職を後にすることも、その逆も可能です。本件では、辞任日を会社の希望に合わせて先にし、退職日は有給休暇を取得したうえで月末としました。

Q. 会社から「辞任日を変えてほしい」と求められたら、応じなければなりませんか?

A. いいえ、応じる義務はありません。取締役の辞任は本人の意思表示で効力が生じるため、辞任日は本人が決められます。ただし、会社の希望に応じても本人に不利益がない場合には、応じることで話し合いが早く進むことがあります。本件では、退職日と有給休暇の取得が確保されていたため、辞任日については会社の希望に沿いました。応じるかどうかは、何を確保したいかを整理したうえで判断します。

Q. 辞任したら、登記からは必ず名前が抜けますか?

A. いいえ、必ずではありません。辞任の登記は会社が申請する手続で、辞任した本人が自分で申請することはできません。会社が手続をしなければ、辞任した後も登記に名前が残り続けることがあります。そのため、辞任を伝えて終わりにせず、会社に登記を求め、登記情報を取得して実際に抜けたかを確認することが大切です。会社がいつまでも応じない場合には、裁判で登記手続を求める方法があります。本件では、会社が登記を済ませたことを登記情報で確認しました。

Q. 役員を兼ねる従業員の退職を弁護士に依頼した場合、費用と期間の目安はどのくらいですか?

A. 費用は、会社との交渉の難易度や、未払賃金・損害賠償などの争点の有無によって異なりますので、一概には申し上げられません。期間についても会社の対応次第ですが、本件では受任通知から1週間で会社の了承を得て、ご相談から約1か月半で退職日を迎えました。初回相談でご事情を伺ったうえで、費用と見通しをご説明しています。

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役員という立場があるために退職を言い出せない方、辞任や登記、損害賠償の不安で動けずにいる方は、一度状況を整理してみませんか。

GK総合法律事務所は東京都杉並区南阿佐ケ谷にあり、取締役の辞任や退職に関する会社との交渉を数多く手がけてまいりました。杉並区・中野区・練馬区をはじめ、東京都内全域からご相談をお受けしています。

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※本記事は実際の事例をもとに、ご依頼者様のプライバシーに配慮して内容を一部変更しています。事案の内容によって結果は異なり、同様の結果を保証するものではありません。

弁護士 小澤亜季子(東京弁護士会所属)